●エンジンの積み替え
 2005年2月13日。私の誕生日であったその日、広島県から山陽自動車道を爆走中に名機F8Aエンジンが絶命しました。元々、3年前に部品取りの1型から移植したこのエンジンは、クランクシャフトプーリーの固着や、滅茶苦茶な点火タイミング、あまりにも乱暴なタイミングベルト交換といった適当整備が施されていた「程度下」なものを蘇生して使用していました。私のエイトは高速移動、街乗り、クロスカントリー走行と、かなり酷使されているので一気に天寿を真っ当してしまったようです。症状はオイルプレッシャースイッチからのオイルリークによるクランクメタル焼きつき、コンロッド折損、ピストン破損です。幸い、エンジンは何機か所有しているので、調子の良いものに積み替えてしまう事にしました。
 今回搭載するのは、滋賀のハイロンサム氏から引き取ったF某Aエンジン。降ろした死亡エンジンは、ヘッドが歪んだF8Aと組み合わせて蘇生し、ストックすることにします。ここで積み替え方法をイチから紹介しても仕方ないので、積み替えを半日以内で終わらせるコツでも紹介しておこうかと思います。


 ジムニーの場合、エンジンルームはスカスカで作業性は良いし、2stであれば積み替えは人力でも可能です。しかし、エイトはというと4気筒エンジンを突っ込んでいるので少々メンドクサイ作業です。といっても、横置きエンジン車や、下抜きせねばならない車輌に比べれば、慣れと手順次第でとてもラクチンすが。補機類をいちいち全部外していてはサクサクとは進みません。
 先ず、泥や錆が落ちてくるわ、姿勢がツライわで憂鬱な下回りを片付けておきます。取り外すのは、マニホールドのフロントマフラー取り付けナット2個、ロアクラッチハウジングプレートの固定ボルト2本。これだけでOKです。ロアプレートを外し(外さないと、どう頑張ってもミッションと分離できません)、フロントパイプはフレームに吊っておきます。エキゾースト一式を取り外す必要はありません。
 次に、上から。バッテリーターミナルを外したら冷却水をドレーンし、エアクリーナーボックス、セルモーターを撤去。ホース類はエンジン側以外全部抜きます。ラジエーターのファンシュラウドの下半分だけ外し、ラジエーターを撤去。クラッチワイヤーがエンジンマウントに固定されているので、外します。あとはベルハウジングのボルト2本とナット2個を抜き、配線数本を引っこ抜けば、車体側から切り離されます。これならボルト20本もないので、楽です。


 チェーンブロックでエンジンを吊り上げます。吊り上げ用のフックはインマニ1番と、エキマニ4番のスタッドボルトに装薬するのが一番バランス良く吊れます。エンジンマウントボルト4本を外し、少しだけエンジンを吊る。本当に、少しだけ。この状態でエンジンを前に引きずり出し、ミッションと分離させてからエンジンを少し左に振り、右手でサポートしながらエンジンを吊り上げてゆきます。ここでしっかりサポートしてやらないと、インプットシャフトがクラッチを痛めつけるので注意ガ必要です。吊った状態で、IN、EXマニホールドなどの補機類を外す。この段階だと、下側のナットを緩めるのがとてもラクなのです。搭載状態だと工具のストロークは少ないし、手も入り難いです。エンジンマウントラバーは必ずチェック。足でグニ〜っと押してやって、亀裂が走らなければOK。ミッションマウントラバーは装着状態でミッションを左右にゴリゴリしてやれば確認できます。あとは、新たなエンジンを装着するのみ。


 各マニホールド、キャブ、ダイナモなどを装着したエンジンをユックリ挿入する。ここでは外れているがクーリングファンもついたままでOKです。一旦、フレームの上に着地させてから微妙に吊り上げて、インプットシャフトと水平にして先っちょを入れたら、レンチでクランクを回しながら挿入すると、ほぼ一発で入ります。勿論、クラッチセンターが出ていたらのハナシ。あとは、エンジンを腹で押さえつつ、ベルハウジングとの固定ボルトを入れて、エンジンマウントの位置を合わせてボルトを仮止め。まだ、降ろしてはいけません。微妙に吊り方を変えながら、ボルトがスンナリ回るように位置決めして、本締めしてから完全に降ろしてやります。


 取り外した補機類をサクサク装着。無駄なものは外していないので、早いです。エアクリーナー、ラジエーター、セルモーター、ホース、ハーネスを接続してベルトを張る。ついでにディストリビューターを一旦引き抜き、適正な位置に挿入しておくと良いでしょう。確実な始動の準備を作業のついでにやっておくわけですね。最後に、下にもぐってフロントパイプとハウジングプレートを固定。プレートを装着し忘れると、ベルハウジングの中がドえらい事になります。


 はい、おしまい。写真をとりながらでも、数時間で終わります(4時間あれば十分)が、今回は色々ゴソゴソしていたので時間がかかりました。外す部品を最小限に抑えるのがコツです。半分程度、邪魔になるものだけを外せば良いわけです。慣れてくると、必然的にわかってきますよね。あとは、オイル交換して、無事に始動すれば完璧・・・・・なのに・・・・クランキングしない。イグニッションONでチャージランプとオイルランプが消灯している状態、これはほとんどフューズボックスの接触不良。ボックスをガタガタゆすってやれば簡単に直る。で、オイル交換にとりかかると、ボトボトっと茶色い物体が出てきただけ・・アレ?もしかして、ヤバイ???この様子だとフィルターも詰まっていそうなので、交換。新しいオイルを入れて、いざ始動!!!!セル一撃。嗚呼〜、快音だ。素敵だ・・・と喜んでいたのも束の間、オイルランプが美しく点灯・・・って、おーーーーい!!結局、プレッシャースイッチ交換、入念なフラッシングで油圧も復活。はぁ〜、やれやれ・・・・。
 ラジエーターのエア抜き、ポイントギャップ、点火時期、タペット、キャブを調整して、一件落着。

 んが、次の日・・・エイトの下にお池ができた。
 
 オイオイオイ・・・で、どこから漏れているかといえば、オイルレベルゲージの挿入穴。ラバーが縮んでユルユルになっていたのね。油圧が戻って噴出したらしい。まぁ、こんな事もあるんですなぁ。交換しておしまい!

 でも、まだ・・・・・それは試乗中に起こった。エンジンは絶好調で、失われていたパワーが戻ってご機嫌。投入した強化クラッチのフィーリングも良い。自宅付近で気分良くクラッチを踏み込むと、「バキッッッッッッ!!!」スコスコ・・・そう、スコスコ。クラッチがスコスコ〜♪パワーが戻って、クラッチも強化されて・・・弱っていたレリーズベアリングの固定スプリングが、折れた。また、エンジン降ろします・・・・・。
 で、10日ぶりにようやく完全復活を果たしました。